どんな仕組みで効くのか
GLP-1・GIPは、食事をとったときに腸から分泌される「インクレチン」というホルモンの仲間です。GLP-1/GIP受容体作動薬は、これらのホルモンと似た働きをするように作られたお薬です。
食欲を落ち着かせる
脳の食欲中枢に働きかけ、食欲を自然にコントロールしやすくします。
満腹感を持続させる
胃から腸への食べ物の移動をゆるやかにし、満腹感が長続きしやすくなります。
血糖値を安定させる
インスリンの分泌を促し、食後の血糖値の急な変動を抑える働きも報告されています。
図: 食事をきっかけに分泌されるGLP-1/GIPが、脳・胃・膵臓の3か所に直接働きかけるとともに、脳を介して脂肪細胞の分解を促すイメージ
薬剤の種類
当院では、糖尿病の有無など、お一人おひとりの状態に応じて次の4種類の中から適切な薬剤をご提案します。いずれも日本国内で承認された医薬品です。
| オゼンピック | 一般名: セマグルチド/GLP-1受容体作動薬 2型糖尿病治療薬として承認。糖尿病のある方に使用します。 |
|---|---|
| マンジャロ | 一般名: チルゼパチド/GLP-1/GIP受容体作動薬 2型糖尿病治療薬として承認。糖尿病のある方に使用します。 |
| ウゴービ | 一般名: セマグルチド(高用量)/GLP-1受容体作動薬 肥満症治療薬として承認。糖尿病のない肥満症の方が対象です。 |
| ゼップバウンド | 一般名: チルゼパチド(マンジャロと同成分)/GLP-1/GIP受容体作動薬 肥満症治療薬として承認。糖尿病のない肥満症の方が対象です。 2026年5月、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)への効能追加も承認されました(BMI27以上の方が対象)。日本でSAS治療薬として承認された初めての薬剤です。いびきや無呼吸でお悩みの方もご相談ください。 |
いずれも週1回の自己皮下注射です。保険診療での使用には別途厳格な条件があり、当院では自由診療(保険適用外)としてご提供します。実際に使用する薬剤は、問診・血液検査の結果をもとに医師が判断します。
保険診療で使用する場合の条件
「国内で承認されている」ことと「保険診療で処方できる」ことは別の話です。上記4剤はいずれも承認された医薬品ですが、保険で使うにはそれぞれ次のような条件があります。
| ウゴービ・ゼップバウンド (肥満症治療薬) |
・BMI 35以上、または BMI 27以上かつ、下記「肥満に伴う健康障害」11項目のうち2つ以上を合併していること(高血圧・2型糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群などが代表例です) ・高血圧・脂質異常症・糖尿病がある場合は、それに対する治療がすでに行われていること ・6か月以上の食事・運動などの生活習慣指導を受けても十分な効果が得られなかった場合に限る(この期間は薬物療法を行いません) ・2か月に1回以上、管理栄養士の面談を受けること ・保険診療での治療期間には上限(72週程度)が設けられている ・処方できるのは循環器や糖尿病の専門医が在籍し、研修医がいる施設になります |
|---|---|
| オゼンピック・マンジャロ (2型糖尿病治療薬) | 2型糖尿病の診断がある方であれば、通常の糖尿病治療と同様に保険診療で処方できます。肥満症治療のみを目的とした保険適用ではありません。肥満外来における栄養指導の期間は必須ではありません。 |
「肥満に伴う健康障害」とは(全11項目)
日本肥満学会の診断基準で定められている項目です。BMI 27以上の方は、このうち2つ以上を合併していることが保険適用の条件のひとつになります。
- 1耐糖能障害(2型糖尿病・糖尿病予備群など)
- 2脂質異常症
- 3高血圧
- 4高尿酸血症・痛風
- 5冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞など)
- 6脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 7非アルコール性脂肪性肝疾患(脂肪肝)
- 8月経異常・不妊
- 9閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 10運動器疾患(変形性膝関節症・変形性股関節症・腰痛など)
- 11肥満関連腎臓病
※このうち高血圧・2型糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群は特に頻度が高く、保険適用の判定でもよく該当する代表的な項目です。
ゼップバウンドには、肥満症とは別の「OSAS単独」の保険適用もあります
2026年5月、肥満症としての条件(上記)とは別の基準で、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)そのものを対象とした保険適用がゼップバウンドに追加されました。条件は「BMI 27以上」かつ「睡眠検査で中等症以上のOSASと診断されていること(PSG検査でAHI 15以上、または簡易検査でREI 30以上)」です。
この基準を満たせば、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの合併がなくても対象となり得ます(肥満症としての「健康障害を2つ以上合併」という条件は不要です)。ただし保険診療で使用できる期間の上限は52週程度で、肥満症の場合(72週程度)とは異なります。
図: ウゴービ・ゼップバウンドを保険診療で使う場合の3つの条件(すべて満たす必要があります)
図: 保険診療での栄養指導期間と注射薬を継続できる期間
※ 保険診療の場合の目安です。当院は保険診療での注射薬処方は行っておらず、自由診療でご提供しています。
当院での対応
保険での注射薬(ウゴービ・ゼップバウンド)の処方は、上記のとおり循環器や糖尿病の専門医が在籍し、研修医がいる施設でなければ行えません。当院はこの施設要件を満たしていないため、保険診療での注射薬の処方はできません。また、条件自体も複雑で、ご自身で該当するかどうかを判断するのは容易ではありません。
そのため当院では、問診・検査の結果をもとに保険診療で治療できる可能性があるかどうかを判断し、該当する場合はあなたに合った施設をご紹介しています。自由診療として当院で治療を続けるか、保険診療対応施設をご紹介するかは、診察でご相談のうえ決めていただけます。
投与方法・スケジュール
週1回、ご自身で行う皮下自己注射です。いきなり通常量を使うのではなく、体を慣らしながら少しずつ増やしていきます。
| 投与頻度 | 週1回(毎週同じ曜日) |
|---|---|
| 投与方法 | ペン型注射器による自己皮下注射 |
| 注射部位 | お腹・太もも・二の腕(毎回少しずつ場所を変える) |
| 開始のしかた | 少量から開始し、数週間ごとに医師の判断で段階的に増量 |
| 初回の指導 | 看護師が手技を実演し、一緒に確認 |
少量からスタート — 消化器症状(吐き気など)が出にくいよう、まずは少量から開始します。
数週間ごとに少しずつ増量 — 体調を確認しながら、医師の判断で段階的に増量していきます。
維持量で週1回を継続 — 目標の用量に達したら、毎週同じ曜日に自己注射を続けます。
注射部位はローテーション — お腹・太もも・二の腕など、毎回少しずつ場所を変えて注射します。
使い方は看護師が実演指導 — ペン型の注射器を使用し、初回は看護師が手順を一緒に確認します。ご自宅での自己注射に不安がある方もご相談ください。
期待できる効果
食欲の減退・満腹感の持続により、自然に食事量が減りやすくなります。数か月単位でゆるやかな体重減少が期待できますが、効果の出方には個人差があります。
| 食欲面 | 「以前より食べる量が自然に減った」「間食したいと思わなくなった」という声が多くあります。 |
|---|---|
| 体重面 | 生活習慣指導と併用しながら、数か月単位でのゆるやかな減量を目指します。急激な減量を目的とした薬剤ではありません。 |
| 血糖面 | 食後の血糖値の変動が穏やかになる傾向が報告されています。 |
効果には個人差があり、必ず痩せることを保証するものではありません。生活習慣指導(食事療法・運動療法)と組み合わせることで、より安定した結果が期待できます。
副作用・安全性情報
多くは軽度で、体が慣れるにつれて落ち着く傾向がありますが、まれに注意が必要な副作用もあります。
| よくある副作用 | 吐き気、便秘、下痢、嘔吐、胃部不快感・胸やけなど。特に開始直後や増量直後に出やすく、多くは時間の経過とともに軽快します。 |
|---|
⚠ まれだが注意が必要な副作用
- 急性膵炎 — 激しく持続する腹痛・背部痛に嘔吐を伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 胆のうの問題(胆石・胆のう炎など) — 右上腹部の強い痛みや発熱がある場合はご相談ください。
症状が強い場合は無理に増量せず、医師にご相談ください。上記以外の症状でも、気になることがあれば遠慮なくお申し出ください。
対象とならない方・注意が必要な方
安全に治療を受けていただくため、以下に該当する方は使用できない、または慎重な判断が必要です。問診で必ず確認します。
明確に対象とならない方
- ご本人または家族に甲状腺髄様がん(MTC)の既往がある方
- 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の既往がある方
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中の方
- 薬剤成分に対し過敏症の既往がある方
使用にあたって慎重な判断が必要な方(要相談)
- 膵炎の既往がある方
- 重度の消化管疾患(胃不全麻痺など)がある方
- 腎機能が低下している方
- 糖尿病網膜症がある方
- 1型糖尿病の方
- 18歳未満の方
なお、これまでの複数のヒトを対象とした研究では、GLP-1受容体作動薬の使用によって一般的な甲状腺がんの発症率が増加するという結果は確認されていません。上記の対象外基準は、動物実験で見られた所見をもとにした安全性への配慮によるものです。ご不安な点は診察で医師に直接ご確認ください。
よくある質問
効果の出方には個人差があります。体調や生活習慣とあわせて医師が経過を確認し、用量の調整や、内服薬・生活習慣指導への切り替えなど、別の選択肢もご提案します。
必ずしも一生続けるものではありません。目標体重や体調を見ながら、医師と相談のうえで減量・中止のタイミングを検討します。中止後の体重維持には生活習慣の継続が重要です。
お薬の種類によっては併用できない、または注意が必要な場合があります。現在服用中のお薬がある場合は、お薬手帳をお持ちのうえ診察でお伝えください。
妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中の方は使用できません。妊活をご予定の場合は、休薬のタイミングについて事前に医師にご相談ください。
ペン型の注射器で、痛みも少なく簡単に行える設計です。初回は看護師が手順を一緒に確認しますので、一人で不安なまま始めることはありません。
注射薬(ウゴービ・ゼップバウンド)を保険診療で処方できるのは、循環器や糖尿病の専門医が在籍し、研修医がいる施設に限られており、当院はこの施設には該当しないため、保険での処方はできません。ただし、問診・検査の結果をもとに保険診療で治療できる可能性があるかどうかを判断し、該当する場合はあなたに合った施設をご紹介していますので、まずはご相談ください。
ゼップバウンドは2026年5月に中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)への効能追加が承認され、日本で睡眠時無呼吸症候群の治療薬として承認された初めての薬剤です(BMI27以上かつ睡眠検査で中等症以上のOSASと診断された方が対象)。肥満症としての保険適用とは別の基準のため、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの合併がなくても対象となり得ます。いびきや無呼吸でお悩みの方もご相談ください。CPAP治療などの詳細は、いびき・睡眠時無呼吸症候群専門の姉妹サイトでもご案内しています。
まずはお気軽にご相談ください
GLP-1/GIP受容体作動薬が自分に合うか、まずは診察でご相談ください。
自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があり、必ず痩せることを保証するものではありません。